AEDに特化したレンタル(リース)と販売の専門会社です。(全国対応)
マラソン大会や工事現場などで使用する1日から数ヶ月のレンタルや、5年以上の契約レンタルを行っています。(新サービスのリモート点検付)

AEDレンタルサービス株式会社

高度管理医療機器等販売業・貸与業(許可 第7019号,2板保生医や第71号)
〒771-0134 徳島県徳島市川内町平石住吉209番地5 徳島健康科学総合センター(本店 配送センター)
〒175-0092 東京都板橋区赤塚1丁目11-2-102(東京オフィス)

フリーダイヤル ナクヒト ナシニ

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AEDの雑学(関連情報)

AED(自動体外式除細動器)に関すること

救命に関すること

その他の情報

AED(自動体外式除細動器)に関すること

AEDとは

最近のAED例

AED とはAutomated(自動化)、 E:External(体外式)、 D:Defibrillator(除細動器)の頭文字です。日本語では自動体外式除細動器と訳されます。
人間の心臓は完全に静止する前にけいれん(細動)を始めると言われています。そのタイミングで使用した場合に有効な治療器です。こういう心臓が細動しているタイミングで裸の胸の上にAEDのパッドを貼り付けますと、自動で心電図を解析し細動状態を検出したら自動で充電まで行います。最後に放電ボタンだけは人の手に委ねられております。肝心なのは、AEDが自動で判断しますのでその判断に任せたら良いとなっています。AEDが医学的な判断をしますので、いざという時は積極的な使用が重要と思います。
AEDは電源を入れますと音声による操作の説明がありますので、落ち着いて指示に従い操作しましょう。この音声指示により初めての方でも操作ができます。倒れている人を発見したなら、119番通報や胸骨圧迫、AEDの使用で助けられるかもしれません。

AEDの歴史

AEDの開発は、初期の頃だと1950年代までさかのぼります。当初は心臓のけいれん(心室細動)を止めるために、電気ショックが有効であるということが分かっていて、そのための直流除細動器が発明された。その後、実験や技術の向上にともなって1970年代以降は持ち運びができるレベルまで改良が加えられました。現在のようなAEDは、1970年頃のものがベースになっています。
日本での導入は1998年頃からで、扱い方を学んだ救急隊員であれば使用することが可能でした。2004年からは、一般市民がAEDを使うことができるようになり、一次救命によって助けることができる人数を大きく上昇させたと考えられています。
AEDは、自動で操作手順を知らせる機能が付いているため、機械の指示に沿って取り扱うことで、医学知識の少ない一般市民の方でも使用できるようになっています。最近では音声ガイダンスに加え液晶ディスプレイに操作をイラスト表示するものも出てきており更に操作がし易いものが出てきております。

日本でのAED普及台数

インターネット上で簡単に検索可能

坂本哲也様(帝京大学医学部 救急医学講座) の「心臓突然死の生命予後・機能予後を改善させるための一般市民によるAEDの有効活用に関する研究」によりますと、2016年時点で日本でのこれまでのAEDの販売台数はおよそ84万台であり、うちPAD(一般市民が使用できるAED)が82%(68.8万台)を占めたとあります。この設置台数は、毎年約9万台弱で新規販売推移しているとのことです。この数字は、出荷台数につき現状の設置台数とは異なります。(AEDには耐用期間が決まっており、廃棄して更新されたAEDも多くあります。)
このように大変多くのAEDが公共の施設やコンビニや駅構内、店舗 、会社、学校など様々な箇所に設置されております。
最近ではこの設置情報をパソコンやスマホなどで簡単に確認することが出来ます。スマホにこのURLを登録しておきますと非常に有効活用ができます。知らない場所で突然倒れた人を発見した場合や自宅近辺のAEDを確認しておくことはいざという時に役立つと思います。

⇒AED設置場所の確認はこちら

AEDの一般市民での認知度

AEDは全国各地のいたるところに設置され一般市民の認知度もかなり高い数字となっていると思われます。ただ、心臓マッサージや、AEDを使用した応急手当ができるとした人の割合は約4割程度と言う結果もあります。(2017年、内閣府世論調査より)現在は学校で授業の一環としてAEDを用いた救命講習が行われておりますので、将来的にはAEDを使える人の割合も多くなってくると思われます。
普通救命講習などは消防署で無料で受けられると思いますので、一度受けられることをお勧めします。また、人数が集まると会社などに出向いてくれての講習会を行っているケースもあります。お近くの消防署に相談をしてみてはいかがでしょうか?
設置がかなり進んできた現状にありますので、設置場所の把握とAEDを使えるようになることは必要と思います。

AEDの設置方法に関して

AED収容ボックススタンド

AEDの設置方法に決まりがあるわけではないですが、設置している場所の明示が必要です。少なくともAEDマップに登録してある施設に関しては、外部の方が利用するケースもあるのでカウンターの中や棚の上など一見して分かりにくい場所への設置は良くないと思います。
設置方法に関してはできれば、AED収容ボックスやスタンドの収容ボックスへの設置が理想的です。ボックスなどに設置した場合には、AEDのインジケータが一目で分かるので毎日の点検も楽になります。
ブザーが鳴るボックスがありますが、目的は盗難防止とAEDを取り出した(救命にはいった)ということで救助を依頼しているとう合図にもなります。ブザーはほとんど電池式なので定期的にブザー音がするかどうかの確認をお勧めします。

AEDの耐用期間に関して

厚生労働省通知の一部切り抜き

AEDにはそれぞれ製造・販売 会社が決めた耐用期間があります。これは保証期間とは全然意味が違っております。耐用期間とは使用環境、稼働 時間や使用回数などを考慮し、製造・販売 会社が設定しています。 (カタログに記載されていると思います。)この期間を過ぎたAEDに関しては更新をしていざという時に安心して使えるようにしておきましょう。耐用期間の確認で計画的な更新が重要です。
ちなみに保証期間とは、メーカーが故障した際に無償で修理などをしてくれる期間となります。5年と設定しているメーカーが多いようです。

AEDの流れる電流に関して

AEDを含む除細動器の世界では、ジュールという単位が使われております。ジュール(J)=電流(A)×電圧(V)×秒(S)という計算式になります。生体は電流によって反応をするのですが、大雑把ですが電流が30Aが0.01秒流れております。(非常に短い時間に大電流が流れていることになります。)
大きな電流は生体(心臓の筋肉など)にダメージが大きいとされており、最近では成人/小児の切替付きのAEDが出てきております。成人=小学生以上は150J、小児の場合には50J近辺のエネルギーになっております。
大きな電気が流れるので、ショックボタンを押す際には患者から離れているのを確認してから押しましょう。

心電図解析と充電時間に関して

救命時に重要なことは胸骨圧迫を強く速く絶え間なく行うことが重要です。このことを念頭に置きますと、AEDを使用する際に胸骨圧迫ができないタイミング(患者から離れるタイミング=心電図の解析時間+エネルギ充電時間)が短い機種が良いという事になります。すなわち、心電図の解析時間とエネルギ充電時間が短いAEDが優れた性能のAEDと言えるわけです。AEDの設置をご検討の方はこの視点でAEDを比較するのも必要と思います。弊社でレンタルする日本光電のAEDはこの心電図解析と充電時間が約8秒と短いのでいざと言う時に役立つと思います。

AEDの日常点検

日本光電AEDインジケータ例

AEDはめったに使用することがなくいざ使用しようとした際には確実に作動してほしいという点で非常に特殊な治療機です。AEDを設置しても使用されないままに耐用期間が過ぎて更新しなければならないとうことがほとんどだと思います。
AEDにはどの機種も図のようなセルフチェックのインジケータが付いています。AEDという装置はどの機種も毎日1回セルフテストを行っています。セルフテストの内容はメーカーによりまちまちです。日本光電のAEDのようにパッドの断線や使用期限なども行っている機種もあります。セルフテストの結果を示すインジケータの表示方法も機種によりまちまちですのでそれぞれの機種で確認をしておくことが重要です。
このインジケータの確認しておくことが、非常に重要です。インジケータの結果を確認することに合わせて、パッドの期限、バッテリの交換時期の確認も必要です。厚生労働省では、このインジケータの確認や消耗品のチェックをしたことを記録として残すようにガイドラインを提示しております。記録内容は決まったフォーマットがあるわけではなく、カレンダーに点検者の名前を書くことや✔印を書くことで良いとなっており非常に簡単です。各メーカーが作成している点検表のフォーマットをダウンロードして使用されるのが一番良いかと思います。
このインジケータの確認と記録は大きな負担とはならないかと思いますが、忘れがちといったことが多いように見受けられます。いざという時に使用できる準備を日頃からしておくことが設置者としての義務となります。

AEDの国際化対応に関して

バイリンガル仕様のAED(日本光電)

バイリンガル仕様のAEDをご存知でしょうか?日本語に続いて英語でも操作をガイドするAEDです。写真は日本光電製のバイリンガル仕様のAEDです。
日本でも都市部や観光地では多くの外国人が訪日されております。また、ラグビーワールドカップ、オリンピックなどここ数年で大きな国際大会が日本で開催されます。今まで以上の多くの外国人が訪れる状況にあるので、AED普及の世界の先進国として多く設置されることを期待します。これだけたくさんの人がいる対策として、バイリンガル仕様のAEDは今後必須となってくるのかもしれません。

イラストガイドの効果

日本光電AED-3150のイラストガイド

今では色々な場面で救命講習が行われていますし、ユーチューブなどの動画サイトでも救命の手順などの動画がアップロードされています。従って、救命の手順はだいたい理解しているので、いざという時にAEDは使用できると思われている方が多くなってきているのではないでしょうか?しかし、実際にそのいざという時になると気は動転するし平常状態で対応できないということも十分考えられます。
平成30年の12月に一般財団法人日本救急医療財団より”AEDの適正配置に関するガイドライン”が改訂版として出されました。その中で、AEDのイラストガイド機能を推挙する記載がありますので、ご紹介させて頂きます。以下原文の通り。

7.設置されるAEDの機能に関する注意(8ページ)
非医療従事者によるAEDの使用が認められて依頼、AEDの機能にも、さまざまな改良が加えられてきた。未就学児に対する対応はその一つであり、乳幼児のためのパッドやキーを配置しているAEDも増加している。しかし、実際の使用にあたっては、傷病者が未就学児であるかどうかの確認よりも、AED の装着を急ぐべきである。また、現場で成人用の装備しかない場合であっても、早期電気ショックをためらってはいけない。
AED は、どのような機種であっても、操作しやすい機器であり、電源を入れると音声ガイドにより操作を指示してくれる。しかし、音声ガイドだけでは現実には、電気ショックを完遂できないケースがある。音声ガイドの言語に対する配慮とともに、音声だけでなく視覚によるガイド機能のますますの充実が求められる。これは、障がい者や外国人にとっても、重要な機能である。
わが国で認可されているAED は、傷病者の心電図を自動解析して電気ショックの適応を操作者に指示してくれる。しかし、電気ショックボタンは、操作者が周囲の安全を確認の上、押すことが求められる。近年、欧米で電気ショックも自動で与えてくれる機器が普及してきていることは、注視すべきである。

以上が内容となります。現状では、ほぼどのメーカーも小児対応が進んできておりますが、イラストガイドに関しては各社取り組みがまちまちです。AEDは非医療従事者(一般市民)が使用する機器なので、今後は特にこのイラストガイド機能有り無しを機種選定に加えていく必要があると思います。

除細動器の種類に関して

着用型自動除細動器

広く除細動器の種類という観点で列挙しますと以下のようなものがあります。

【マニュアル式除細動器】
病院などで医師が使用する除細動器です。患者の胸に電極や電極パッドを貼ることにより心電図を表示させ、その波形をもとに医師が判断をして適正なエネルギーで電気ショックさせ除細動します。

【半自動除細動器】
日本では救急救命士さんが利用する除細動器です。一般的なAEDと違い心電図波形が確認できるようになっています。ただし、心電図波形の判断自体は除細動器の方で行います。すなわち、医師の使用するマニュアル式除細動器とAEDの中間的な除細動器となります。

【自動体外式除細動器(AED)】
一般市民が使用できる除細動器です。心電図の表示などは無くAED自体が除細動の判断をします。救助者はAEDの判断に任せて、電気ショックを行います。

【植え込み型除細動器(ICD)】
心停止が起こりうる患者への治療の一環として、手術により体内に植え込む除細動器です。この除細動器は常に心電図を判断しており、細動を感知した際には自動で除細動を行います。体内に植え込むので負担となりますが、心停止の起こりうる患者さんにとっては大きな安心感となります。

【着用型自動除細動器(WCD)】
ベストと一体型の除細動器で着衣することでICDと同様に細動を自動的に感知をして自動的に電気ショックを与え除細動します。主にICDの植え込みまでの間に着用されます。

AEDの内部時計に関して

取り出したイベントログ例

AEDは実は内部に時計を持っていますが、ほとんどの流通するAEDは外部に時刻表示をしていないので、ご存じない方が多いかと思います。実はこの時刻は救助データを取り出した際に非常に大きな意味を持ちます。プロの救急隊員は正確な時間で現場対応を記録として残しております。事後の検証としてAEDからデータを取り出すことが良くありますが、その時刻がずれていてでたらめな時刻でしたらどうなりますでしょうか?せっかくの取出したデータの意味が半減するのは間違いないです。
大事な時刻調整が簡単にできれば、手間としても大きな問題にはならないのですが、多くのAEDが内部設定にまで入り込んでの調整になるので、一般の人にはほぼ不可能な作業となっています。その為か、時刻調整は重要なのですが、時刻を正確に調整しておきましょうというような公的なガイドラインは出ていないです。ただし、一部の市では庁内で管理するAEDの時刻調整を定期的にルールとして調整を指導しているところもあります。当然ですが、消防署のAEDは時刻調整はしっかりとされております。
この点で、日本光電のAEDはリモートで自動で時刻調整する機能を有しておりますので、大きなメリットがあると思われます。スマホなどの時刻を調整する必要はないかと思いますが、これと同じような方法で自動で時刻調整をしているのです。

成人と小児の切り替えに関して

成人/小児切替スイッチ

電気ショックに関して、なるべく効果がある中で小さなエネルギーの方が心筋へのダメージが少なく良いとされております。その観点で、AEDに関しても最新の機種に関しては写真の通りに小児と成人の切り替えスイッチがついております。この切り替えスイッチにより、電気ショックのエネルギーを切り替えております。小児のエネルギーは成人の約1/3程度とされております。
小児と成人の切り替えは、小学校に入学しているかどうかとなっています。幼稚園児などは小児で使用します。小学校に入学した児童に対しては、成人で使用をします。成人で使用する年齢範囲が広いことを知っておく必要があります。
成人の範囲は大きいので、当然体格差が大きくあります。例えば、小学1年生と力士とが同じエネルギで良いのかとの疑問があるかと思います。最新の機種では、内部で自動的にエネルギーを上げるような機能が付いている機種もあります。エネルギ漸増式と言われており、除細動適応で1回目のエネルギーで除細動できなかった場合にエネルギが足りなかったとして自動的に2回目のエネルギは1回目より大きなエネルギで電気ショックをします。このエネルギ漸増に関しては、内部で自動で行っているので使用者としては気にしなくても良い部分です。

バイフェージックに関して

バイフェージックの出力イメージ

AEDはけいれんしている心臓に一時的に大きな電流を短い時間流してそのけいれんを元の正常な拍動に戻す事をします。その時の電流はどの程度でどんな電流でどのように流れているのか知りたいところだと思います。だいたいどのAEDメーカーもショックボタンを押した時に図のような電流が流れます。この時の電流は向きを変えて流れる二相になっている点でバイフェージックと呼ばれています。(二相性)
この方式が主流となる以前には、一方向のみに電流を流していました。人間の生体の反応の研究の結果、二相で電流を流したほうがより少ない電流(エネルギー)で同じ効果が得られることが分かりました。当然小さな電流なので心筋へのダメージなども少なくより良い方式として現在では刺激方式のスタンダードとなっています。この技術により、よりバッテリが長持ちするようになったりショックのための充電時間の短縮などの効果も同時に得られています。

エネルギ出力の漸増式(エスカレーション方式)

AEDは心臓のけいれん状態を判断し充電まで自動で行う優れた治療機器ですが、その患者の体格までは判断できないです。この部分に関しては、人の判断に委ねられています。最近販売されているAEDは本体で成人/小児を切り替えることによって2段階で電気ショックの出力エネルギを変えております。現状、未就学児の小児と小学生以上の成人2段階となっています。AEDの種類にもよりますが、例えば日本光電のAEDの場合、小児モード時では50J(ジュール)、成人モード時では150Jとなっています。ここで、小学1年制と100kgを優に超える力士とが同じ出力で良いのかと疑問に感じませんか?この疑問はごもっともで、病院の中でプロの医師がマニュアル除細動器を使用する場合には体格に応じてダイヤルを回してそのエネルギー量を調整しております。
最近のAEDはこのエネルギの調整を内部で行う機種も出てきております。例として日本光電製のAEDの場合、成人の患者で1回目150Jで除細動できなかった場合、2回目以降は200Jに出力エネルギを自動的に上げる機能がついています。この方式をエネルギ漸増式もしくはエスカレーション方式と言われております。同様に、小児の場合には1回目が50Jで1回目の効果がなかった場合には2回目以降70Jに自動的に上がるようになっています。

適切なAED設置環境としての温度と湿度

スタンバイ時の温度と湿度

生活する上で快適な温度範囲や湿度範囲があるかと思います。最近では温暖化で夏場の温度が40℃を超す日もあったりして熱中症対策は今や常識となりつつあります。ところで、AEDの動作が保証されている温度環境や湿度環境はあるのでしょうか?機器なので-20℃でも70℃でも動作するのではないかと思われていませんでしょうか?実は精密な機器であったりバッテリやパッドを含む多要素機器の為に守るべき環境温度や湿度がメーカーの機種ごとに決まっています。AEDはスタンバイ環境温度というのが製造メーカで決められています。製品の重要なお知らせとして添付文書には各社が記載をして注意喚起を促しております。ただ、残念なことに私の知る範囲でこの環境温度に関してご存じない方も実際いらっしゃいます。
適切な設置温度範囲として、機種により-5℃~50℃や10℃~43℃と機種毎に差が見られます。また、同様に設置湿度でも機種により10%~75%(結露なきこと)や5%~95%(結露なきこと)と機種によりそれぞれ決められています。AEDを最近では様々な環境の中で設置することが多くなってきております。特に屋外設置や寒い地域ではこの環境温度を考慮しての機種選定は必須のことと思います。ちなみに、弊社でレンタルしている日本光電製AED-3100シリーズは温度範囲が広く-5℃~50℃となっています。

AEDの屋外設置に関して

屋外設置対応型AED収容ボックス

AEDに関しては、その性質上24時間いつでも取り出せるということが理想です。現状では官庁の出先機関や一般企業などで設置は進んでいますが、多くは屋内設置となっています。理由としましては、盗難やいたずら防止やAEDの設置温度環境対策が十分でないという理由だと思います。
最近になり、学校等で屋外設置を検討されているケースが出始めてきました。比較的安価な温度対策の取れているボックスなどが出始めてきたので、今後拍車がかかると思います。写真にあるようなボックスですと、AEDのスタンバイ温度(0℃~50℃)をキープしてくれますので、ご紹介をします。一方盗難やいたずらに関しては、ボックスにカギを掛けるわけにもいかないので、ある意味無いことを前提にするしかないのですが、AED自体が流通のシリアル管理をしていることもあり余り盗難などが無いのが現状です。
弊社では、屋外設置にブレーキが掛からないように補償金付でのレンタルを行っておりますので、ご相談ください。

財団全国AEDマップ「QQMAP(iOS版)」のご紹介

スマホ画面例

万が一に備えて日ごろからAEDの設置場所の確認は重要と思います。心臓突然死の約7割が自宅で発生とのデータもありますので自宅近くでのAED設置場所のご確認は重要と思います。また、どこでも緊急時に役立つのがスマホだと思います。そのスマホでその場で直ぐに確認できるものがありますので、ご案内しておきます。
右の写真はiphoneでのQQMAPの画面表示になります。近くのAEDが直ぐに分かりますので、便利に活用できます。
財団全国AEDマップ「QQMAP(iOS版)」アプリケーションについてQQMAPで検索されたらダウンロードは無料ですのでインストールしておくことをお勧めします。

事項でQRコードを掲載いたします。
アプリの特徴として、AED毎の設置情報は情報の精度によって4区分で色分けされています。精度A(青色)、精度B(黄色)、精度C(赤色)、精度D(灰色)となっております。

 

AEDマップ「QQMAP」スマホへのインストールについて

iPhone版ダウンロード(無料)

Android版ダウンロード(無料)
 

最近、財団全国AEDマップ(前項ご参照)の認知度も上がりつつあるように感じております。バイスタンダーによる救助はAEDの一般市民の使用許可の法改正により、どんどん進化してきております。今までは、ただ多くAEDを設置するという観点から設置情報を社会で共有し、緊急時に活かすという流れになりつつあります。そういう意味で皆様が常に携帯しているスマホ画面で見られるとうのは大きな効果を発揮すると考えます。今後は設置しているAED情報を救急指令員が確認し指示するなどのステップに移る日も近いと思います。
財団全国AEDマップのスマホアプリが便利ですが、Android版も利用できるように成りましたので、iOS版とAndroid版のそれぞれのダウンロードのためのQRコードを掲載いたします。
それぞれ、無料なのでいざという時のためにダウンロードされてはいかがでしょうか?

日本救急医療財団のページはこちら

 

AEDの施設内での配置方法に関する提言

救命率と経過時間の関係

一般財団法人日本救急医療財団から平成30年に出された「AED の適正配置に関するガイドライン」より転載します。AEDを施設内で設置する際の参考にしてください。
我が国のAED 普及の実態と効果を検証した調査では、公共のスペースに設置されたAED による電気ショックは心停止から平均3 分以内に行われており、40%近い社会復帰率を示した。あわせて、電気ショックが1 分遅れると社会復帰率が9%減少すること、AED を1000m 四方に1 台から500m 四方に1 台、すなわち設置密度を4 倍にすると、社会復帰率も4 倍になることが示された。愛知万博では300m 毎に100 台のAED が設置され、会場内で発生した心停止5 例中4 例で救命に成功した。コペンハーゲンの調査では、住宅地域では100m 間隔でAED を設置することが推奨されるべきであるとしている。さらに、わが国の別の研究では、一般人が心停止を目撃してから、119 番通報(心停止を認識し行動する)までに2,3 分を要することが示されている。居合わせた人にその処置をゆだねるという性質上、ある程度高い救命率が期待できる状況で、AEDの使用を促す必要があり、以下のように電気ショックまでの時間を短縮するような配置上の工夫が望まれる

(1)目撃された心停止の大半に対し、心停止発生から長くても5 分以内にAED の装着ができる体制が望まれる。そのためには、施設内のAED はアクセスしやすい場所に配置されていることが望ましい。たとえば学校では運動に関連した心停止が多いことから、保健室より運動施設への配置を優先すべきである。
(2)AED の配置場所が容易に把握できるように施設の見やすい場所に配置し、位置を示す掲示、あるいは位置案内のサインボードなどを適切に掲示することが求められる。
(3)AED を設置した施設の全職員が、その施設内におけるAED の正確な設置場所を把握していることが求められる。
(4)可能な限り24 時間、誰もが使用できることが望ましい。使用に制限がある場合は、AED の使用可能状況について情報提供することが望ましい。地方公共団体による行政監査で、AED 収納ボックスが施錠されていたケースなどが指摘されている。
(5)インジケ―タが見えやすく日常点検がしやすい場所への配置、温度(夏場の高温や冬場の低温)や風雨による影響などを考慮し、壊れにくい環境に配置することも重要である。

AEDの適正配置に関するガイドライン(要約版転載)

車や火災に絡む安全確保のためには多くの法規制があります。AEDに関しても将来的には法律での義務化がなされるのかも知れませんが、現状ではありません。(一部の自治体では条例で決めているところがあります。)この様な中、一般財団法人日本救急医療財団が作成した「AEDの適正配置に関するガイドライン」が厚生労働省より公表されております。こちらで記載の内容が現状での基準となっておりますので、設置をご検討中の方は内容のご確認が必要となります。
以下にこのガイドラインの中から効果的な配置場所に絞り要約して転載します。

AED の効果的・効率的設置に当たって考慮すべきこと
1.心停止(中でも電気ショックの適応である心室細動)の発生頻度が高い(人が多い、ハイリスクな人が多い)
2.心停止のリスクがあるイベントが行われる(心臓震盪のリスクがある球場、マラソンなどリスクのいスポ―ツが行われる競技場など)
3.救助の手がある/心停止を目撃される可能性が高い(人が多い 、視界がよい)
4.救急隊到着までに時間を要する(旅客機、遠隔地、島しょ部、山間等)

AED の設置が推奨される施設(例)
① 駅・空港・長距離バスターミナル・高速道路サービスエリア・道の駅
② 旅客機、長距離列車・長距離旅客船等の長距離輸送機関
③ スポーツジムおよびスポーツ関連施設
④ デパート・スーパーマーケット・飲食店などを含む大規模な商業施設
⑤ 多数集客施設(アミューズメントパーク、動物園、(監視員のいる)海水浴場、スキー場、大規模入浴施設などの大型集客娯楽施設、観光施設、葬祭場など)
⑥ 市役所、公民館、市民会館等の比較的規模の大きな公共施設
⑦ 交番、消防署等の人口密集地域にある公共施設
⑧ 高齢者のための介護・福祉施設(50 人以上の高齢者施設)
⑨ 学校(幼稚園、小学校 、中学校、高等学校、大学、専門学校等)
⑩ 会社、工場、作業場
⑪ 遊興施設(競馬場、競艇場、パチンコ店)
⑫ 大規模なホテル・コンベンションセンター
⑬-1 一次救命処置の効果的実施が求められるサービス(民間救急車)
⑬-2 島しょ部および山間部などの遠隔地・過疎地

AED の設置が考慮される施設(例)
① 地域のランドマークとなる施設(郵便局、銀行、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、ドラッグストア)
② 保育所・認定こども園
③ 集合住宅

施設内でのAED の配置に当たって考慮すべきこと
1.心停止から5 分以内に電気ショックが可能な配置
・ 現場から片道1 分以内の密度で配置
・ 高層ビルなどではエレベーターや階段等の近くへの配置
・ 広い工場などでは、AED 配置場所への通報によって、AED 管理者が現場に直行する体制、自転車やバイク等の移動手段を活用した時間短縮を考慮
2.分かりやすい場所(入口付近、普段から目に入る場所、多くの人が通る場所、目立つ看板)
3.誰もがアクセスできる(カギをかけない、あるいはガードマン等、常に使用できる人がいる)
4.心停止のリスクがある場所(運動場や体育館等)の近くへの配置
5.AED 配置場所の周知(施設案内図へのAED 配置図の表示、エレベーター内パネルにAED 配置フロアの明示等)
6.壊れにくく管理しやすい環境への配置

 
AEDの設置間隔の具体的目安

日本循環器学会での提言資料より

救命において、完全な社会復帰が最大の目標かと思いますが、その為には脳の保護が重要です。脳細胞は他の臓器に比べて弱く、心停止となり新しい酸素が供給されない状況になると、一般的に3分から4分程度で細胞の死が始まると言われております。一度死んでしまった脳細胞は体として生き返っても脳の機能は元には戻りません。こうなるとどこかに障害が残り完全社会復帰が難しくなります。
図は日本循環器学会の「スポーツ中現場での心臓突然死ゼロに」の提言の中の資料となります。この図からも分かる通り意識なしの状態でAEDの手配を掛けたとして、その現場から離れAEDを持ってくるまでのAED搬送時間が2分以内となっております。3分以内に電気ショックを行うためには、救命現場から1分以内の場所にAEDが無いといけないことになります。
完全社会復帰を目指すためには、このような考え方でAEDの配置を考えなければなりません。設置場所が公園のような状況とビルとでは考え方が違ってきます。ビルの場合にはエレベータ内設置という方法も考えられますが、確実なのはフロアごとの単位で3フロアで1台とかの設置なども検討が必要かも知れません。

AEDの適正な管理や配置について(徳島県メディカルコントロール)

平成30年12月に徳島県内で医療機関、消防機関、行政がメンバーとなる徳島県メディカルコントロール協議会より、題記の内容の要請が発表されました。こちらは重要なポイント2点に絞り込んだものとななっており参考になるかと思います。

医療とくしまはこちら

1 AED管理について
AEDを設置済の施設では、次のことに留意し、改めて適正な管理について御協力をお願いいたします。
・日常点検(AEDが正常に動くかどうかが分かるランプ等の表示の確認)
・消耗品の交換(電極パッド及びバッテリの寿命を確認)
・AED本体の寿命前の交換(耐用年数の確認)
※リース契約等により、管理を専門の事業者に委託する方法も有効

2 AEDの配置について
次のような場所への配置を推奨しますので、各関係機関または関係団体の御協力をお願いいたします。
・公共施設が近くにない地域の民間施設
・24時間365日営業している店舗(コンビニエンスストア、飲食店等)
・山間部等の市街地から離れた場所にある施設(自治会の集会所、消防団詰所等)
・人が集まる等、AEDを使用する事案が発生する確率の高い場所(遊興施設、レジャー施設、食料品店、ショッピングセンター等)
・人や物の流通に合わせた配置(宅配事業者や移動販売事業者の配達車両等)

 

AEDの案内用図記号がJISに追加

AEDのマークと言えば、赤系のハートのマークに雷マークというのが多いような気がします。しかし、よく見るとそれぞれ違った図記号となっています。
案内用図記号(ピクトグラム)は、言葉や文字によらず、一目見ただけで多くの情報や案内を可能とするものです。日本人だけでなく外国人観光客にもよりわかりやすい案内用図記号とするため、JIS Z8210(案内用図記号)に「AED(自動体外式除細動器)」の案内用図記号が追加されました。
今回の改正により、公共施設等でもJISによる案内用図記号が活用され、多くの人にとってより分かりやすい案内表示が行われることが期待されます。
各社ばらばらの記号から今後は統一化されていきます。AEDの社会環境も一つづつ進化してきております。

AEDの機種選定でのチェック項目

国内で流通するAED例

今日本国内では多くの種類のAEDが販売されております。(6社が10機種以上)目立つところとしては、オレンジや赤色のAEDではないでしょうか?それぞれの機種は違った特徴を有していますが、どれを選定したら良いのか迷う部分かと思います。そこで、選定のポイントをまとめたいと思いますので、ご参考にしていただければと思います。

機種選定ポイント】
①成人・小児の切り替えはどうなっているか?パッドは?
②設置環境温度(温度範囲、湿度範囲)は?
③AED操作が直感的で分かりやすいか?
④AEDのセルフチェックの項目は?
⑤イラストガイドが付いているか?分かりやすいか?
⑥エネルギ出力は体格を考慮した漸増式か?
⑦リモート監視機能があるか?そのサービス内容は?
⑧解析と充電時間は短いか?
⑨耐用年数は?
⑩コストは?(本体価格、パッドやバッテリ使用期間と金額)⇒耐用期間で割った年間コスト

補足として、一括購入が良いのか賃貸借が良いのかは十分検討すべきと思います。AEDは一度設置したら止めることはほぼ無いと思いますので、AEDの費用の考え方として今後年間いくらの費用が掛かるのかの考え方が重要になると思います。その意味で、最近では予算が明確な賃貸借(レンタル)が多くなってきています。
購入(レンタル)する場合、より安くという観点は大切なポイントですが、いざという時に救命に役立つ機種の選定というところがより重要と考えます。

オートショックAED

現在の日本で販売されているAEDはセミオート式となります。セミオートとはAEDの方で心室細動を検知した際に自動でエネルギの充電は行いますが、ショックボタン(放電ボタン)は人が周囲の安全を確認してから押すというものになります。
欧米諸国ではこのショックボタンを押す必要もなく電気ショックをするオートショックAEDが普及してきています。こうした事もあり、日本でも専門家会議の中でこのことに関する検討も始まっています。事実、日本救急医療財団によるAEDの適正配置に関するガイドラインでもオートショックAEDに関して注視すべきであると記載されています。
オートショックAEDのメリットとしては救助者の精神的負担軽減、デメリットとしては救助者の感電の心配が挙げられると思います。救助者の安全は第一に考えるべき点とは思いますが、救助者の精神的負担を考えた場合に大きなメリットもあります。AEDメーカーの開発により救助者の感電の心配が無くなれば、早く実現したい大きな進化したAEDとなると思います。
こうした状況の中、令和3年7月30日付厚生労働省医政局通知で「ショックボタンを有さない自動体外式除細動器(オートショックAED)使用時の注意点に関する情報提供等の徹底について」が通知されました。この様な準備が出始めましたので、いよいよ日本でのオートショックAEDも実用化が近づいてきた感がします。

パッドで除毛の嘘

胸毛処理

正確な心電図解析と効果的な電気ショックのためには、胸毛が非常に濃い場合には、電極パッドを貼る位置の除毛も必要なケースがあると思います。
最近、取扱説明時にお客様より「胸毛が濃い人はパッドを押し付けて一気に剥がして除毛したら良いのですか?」と聞かれました。以前にも同じような質問を受けたことがあります。この答えは「NO」です。この様に誤った知識を持っている人が結構いるんだなと心配になります。電極パッドは除毛テープでは無いので、このような誤った使用方法はしてはいけません。
電極パッドの説明書にもこのような使用方法での記載はないです。多少の胸毛でしたら、電極パッドの粘着力は強いのでしっかりと押し付ける事により殆どは問題ないと思います。どうしても貼れないと判断した際には、通常AEDにはレスキューキットが付属されていると思います。この中に、除毛テープやカミソリが備わっているので、こちらを使用して素早く除毛しましょう。

「成人用」「小児用」の表記変更

小学生は「成人用」を使用

AEDの説明会などでも、注意点としてよく話をしておりますが、小学生に関しては「成人用」の設定で使用します。エネルギ量も大人と同じ大きさでショックを行います。音声ガイドで「小学生以上に使用する場合には、成人用としてください。」とアナウンスする機種もありますが、いざという時には紛らわしく混乱すると思います。
日本AED財団では、この紛らわしさ是正するために、医療や教育の関係者、市民、メディア、有識者を招集して緊急に協議を行い、蘇生ガイドライン内での表記を、「小児用」⇒「未就学児用」「成人用」⇒「小学生~大人用」と修正を行ったと発表がありました。この修正は、徐々に行われますが、当面は以前の表記が併存する状態となります。未就学児とは「小学校入学前」のことです。私自身も、今までの表記は間違いの元だなと思っていましたので、今回の用語の修正で分かり易くなり良かったなと思います。
小学生に「小児用」または「未就学児用」を使用した場合には、エネルギ量が少なすぎて電気ショックが無効となり貴重な命を救うことができなくなる可能性がありますのでご注意ください。

ガイドライン2020対応例(日本光電)

約5年毎に蘇生ガイドラインが改定されております。その改定に合わせてメーカーもそのガイドラインに沿った対応をし始めております。ここでは日本光電の対応例をサンプルとして示します。
ガイドライン改定では、多くの救命処置のデータを集め専門家の方々が決めております。ガイドライン2020とあるように、本来は2020年に発表される予定でしたが、コロナの関係で今回は遅れて改定発表となりました。改定は効果に基づきより分かりやすくという視点で変更がなされております。今回の大きなポイントは前の項目でも記載しましたが、従来の「小児」、「成人」表記がより分かりやすくなっております。音声ガイドの変更も「成人モードです」⇒「小学生~大人モードです」、「小児モードです」⇒「未就学児モードです」、「意識、呼吸を確認してください」⇒「反応がないこと、呼吸がないことを確認してください」となりより分かりやすくなっております。
ちなみに、ガイドライン2015、ガイドライン2010なども見かけられるかと思いますが、いずれにしてもAEDの指示通りに操作する必要があります。古いガイドラインだからと言って使えないとかの問題はありませんのでご安心ください。

(例)日本光電の比較
屋外設置(移設)の取り組み例

AEDも毎年順調に設置が進んでおり、世界でも人口比で先進国となっております。これは、安心社会の取り組みとして誇れるものですが、残念ながらその設置は多くは屋内設置になっております。心臓突然死の発生場所の約70%が自宅との報告もあるので、今のような設置場所が余り良くないと言えます。
このような中で徳島県の石井町で屋外設置に移設したとの新聞記載がありました。夜間や早朝のまさかに対応するためにはこの様な方法が素晴らしいと言えると思います。

屋外設置する上での注意点を挙げておきます。
①設置温度環境(機種毎の対応環境温度のご確認が必要)
②いたずら(盗難)対策(ブザーやカメラ等)
③日々の点検管理(インジケータと消耗品期限の確認とその記録)
④防水、防塵対策(機種ごとのIP55等のご確認が必要)
⑤設置場所の周知、目立つ設置(ランドマークとなる施設)

2022.9.14 徳島新聞
AED収容ボックス付き郵便ポストで屋外設置

AED収容ボックス付きポストイメージ図

心臓突然死の約70%が自宅で発生しているという現実があります。前項でもあるように、今後は屋内設置ではなく積極的な24時間取り出し可能な屋外設置の加速が必要と思います。また、その設置場所も住宅街である方がより効果が大きいと考えられます。
そこで、こうした屋外設置を進める上で良い場所は無いのかと考え、AED収容ボックス付き郵便ポストを思いつき弊社で実用新案登録を行いました。(実用新案登録番号:3237601号)
このAEDボックス付き郵便ポストへの設置が適していると考える理由は以下の通りです。
・人口に応じて均等に点在している。
・ランドマークとして適している。(近隣住民の方は知っている)
・設置が一気にできる。(1件1件設置交渉を必要としない)
・郵便局員が定期的にAEDの状態を確認できる。
・近年のIoT技術でAEDのリモート管理が可能な時代である。

AED救命テント

AED救命テント

収容時

2023年6月に救命テントがSNSで話題となりました。(6.8万人のいいねが付いたようです。)その時のコメントで「これ考えた人天才だね。」「ガバッと一気に開くし、目立つから救急隊が遠くからでも発見できる。」などコメントがありました。実際年々販売数も増えており2022年度は販売実績も過去で一番多かったようです。
このテントの工夫点として、非常に簡単に素早く開くことがあります。(
広げ方の動画はこちら)広げると十分な広さが確保できるのですが、収容時は円形で直径約60cm程の大きさに収容できます。

この救命テントで処置状態を野次馬から素早く隠せます。また、近年では女性に対するAEDの使用率が男性に比べて低い点が問題となっていますが、この点でも女性に対する使用率アップの効果がありそうです。駅や海水浴場、イベント会場など大勢の人が集まる場所へのAED設置ではこのようなテントは今後必要かもしれません。

救命に関すること

バイスタンダーの役割

心停止してから約1分経過するごとに救命率は7~10%ずつ低下すると言われております。早く119番通報をし、胸骨圧迫やAEDの使用による救命処置は極めて重要です。119番通報してから現場に救急車が到着する平均時間は8.6分というデータがあります。(平成28年総務省消防庁データ)傷病者の異変に気が付いたら、自分の身の安全を確認できたら、すぐさま意識の確認を行い意識が無ければ、仲間を集め、119番やAEDの手配をするという一連の流れを短くする必要があります。心臓が起因の場合には数秒で意識が無くなります。人間の脳細胞は心停止状態になって3分から4分で死滅が始まると言われておりますので、119番通報して救急隊員が来るまでの間に胸骨圧迫やAEDの使用ができたら、完全社会復帰の可能性が高まります。

CPRに関して

胸骨圧迫の様子

CPR(Cardio Pulmonary Resuscitation)とは、呼吸や心停止またはそれが疑われる状態にある救急患者に対して行われるもので「心肺蘇生法」とも呼ばれています。心肺停止状態では、脳への酸素供給が止まりこの状態で4分経過すると脳に重篤な障害が発生すると言われております。
蘇生法として行なわれる胸骨圧迫は、心臓と脳への血流の維持を最大の目的とします。そのために適切で連続した胸骨圧迫が極めて重要となってきます。適切な胸骨圧迫とは、胸骨の下半分を真上から、強く(成人の場合約5cmの深さ=単3電池の長さ、小さな子供の場合には胸の1/3)、速く(100~120回/分)、絶え間なく押すことです。この圧迫の速さ(テンポ)は、グーグルで「メトロノーム」と検索をしてみて下さい。結果画面の中に既に100回の設定されたメトロノームが再生ボタン付きで表示されます。従って、再生ボタンを押すだけで直ぐに100回/分のリズムを流すことができます。(アンパンマンのマーチが100回のリズムですが、緊急時に冷静にこの曲でリズムを取るのは難しいかも知れないので、この方法は有効と思います。)
心肺蘇生によりAEDによる電気ショックが成功して心臓が正常動作を再開する可能性が高くなるとされています。

胸骨圧迫でのリコイル

寄りかかった姿勢での胸骨圧迫

普段耳慣れない言葉ですが、リコイルという言葉があります。心肺蘇生法では、胸骨圧迫が非常に重要な役目をします。胸骨圧迫のポイントとして、強く、速く、絶え間なくと言われております。この”強く”の基準ですが、成人の場合には5cm(単3乾電池1本の長さ)胸が沈む強さと言われております。この強さで押す為には、腕をしっかりと伸ばし肩から体重を垂直に掛けるようにして押すことが重要です。一般市民の胸骨圧迫は一般的に強さの面で足りていないケースが多いと言われております。
ここで、図のように前傾姿勢が過ぎて寄りかかった状態で押した場合には、胸郭を完全に戻すことができないです。胸骨圧迫では、強く押すことと合わせて、しっかりと元の状態に戻すことが重要と言われております。この胸郭をしっかりと戻すことをリコイルと言います。このリコイルがしっかりとできないと、心臓の周りの血管(冠動脈)に血の流れが弱くなり心臓にダメージが残ることとなります。胸骨圧迫ではしっかりと元の状態に戻しそれからしっかりと押し込むことが重要ということを認識しておく必要があります。

心臓震盪(しんとう)に関して

子供のスポーツは危険がいっぱい

心臓震盪とはスポーツ中の突然死の原因の一つです。心臓の真上あたりに衝撃が当たった時に心臓が痙攣(けいれん)し始めてしまう状態のことを言います。生まれつき心臓が弱い人がなりやすいという訳ではなく健康な子供や若い人でも発症します。健康な人でも心臓には受攻期というタイミング(心臓に血液が満たされていくタイミング)で衝撃を受けると心臓の筋肉が細動(痙攣)し、血液のポンプ機能を無くします。衝撃というのは野球やソフトボール、体が強くぶつかった際の衝撃などの多くは子供の球技で起こります。多くは18歳以下でなりやすいとされております。子供は胸郭がまだ柔らかく心臓が衝撃を受けやすいからです。
スポーツ指導者や保護者の方は、この点を十分に理解をして安全対策を施す必要があると思います。万が一のためにAEDの準備と救急講習の受講は必要と思います。

心室細動に関して

心停止となる前に心臓がけいれんしているタイミングがあります。心臓がけいれんしている時は心電図の波形がまっすぐにはならずギザギザの不規則な波形になります。AEDは内部でこの不規則なギザギザの心電図波形を解析しております。けいれんしている時は心臓の役目である血液を送り出すポンプ機能は無くなっております。このけいれん状態にあるタイミングで電気ショックを行うと心臓は正常なリズムを取り戻すとされております。この原理を利用したAEDは心臓の細動(けいれん状態)を電気ショックにより除く(正常に戻す)装置であります。

ブルガダ症候群

特徴的なブルガダ型心電図

1992年スペインのブルガダ兄弟により報告された突発性心室細動(明確な原因が無いのに突然心室細動となる)という病気としてブルガダ症候群があります。日本では、「ぽっくり病」と言われ寝ている最中に突然亡くなるケースが多いと言われております。このぽっくり病で亡くなった方のかなりの割合がブルガタ症候群に該当すると言われております。
この病気は男性に多く夜間に心室細動(心臓のけいれん)の発作を引き起こす特徴を有しております。多くの場合は、心室細動が一過性で一時的な失神で終わるようですが、中にはこの心室細動が続きそのまま命を落とすこともあるようです。最近では、様々な入院検査を行い非常にリスクが高いと判断された場合には、植え込み型除細動器の植え込み手術の適応となっています。
検診などで行う一般的な心電図検査でもこの波形が捉えられるために、ブルガダ型心電図と言われた際には大きな不安を感じることになると思います。多くの場合は問題ないようですが、循環器の専門施設で高度な検査を受けておいたほうが良いと言われております。中でも、失神といった症状のある方は、速やかな検査や治療が必要と言われています。

死戦期呼吸に関して

意識無し+呼吸無しが胸骨圧迫やAED使用の基準ですが、この呼吸の判断が難しいところです。死戦期呼吸(下顎呼吸、鼻翼呼吸、あえぎ呼吸)というのがあり、しゃくりあげるような動きをする異常な呼吸のような動きが心停止の人に見られます。言葉では、なかなか伝わらないのでネットで調べて頂けますと動画で説明しているものが見つかります。心停止になっている人で約5割ぐらいの人に見られる異常な呼吸です。いざという時のために、動画でのご確認をおすすめします。
意識が無い人で普通の規則正しい呼吸でない人は心臓がけいれんを起こしている証となります。完全な胸骨圧迫とAEDの適用となります。一般の人には、非常に難しい部分とは思いますが、通常の呼吸で無いものは呼吸無しと簡単に考ることが重要なポイントになります。

女性の方に対するAED使用に関して

女性でのパッド貼付け例

救命講習などではAEDを使用する際には胸を裸にし電極パッドを貼るということが標準的になっております。このような状況の中、学校内で心停止になった小中高・高専生232人を対象に、周りの人からどれほどの割合の傷病者が胸部圧迫やAEDパットを装着するなど救命処置を受けたかの調査研究レポートが出されました。(京大、阪大、大妻女子大などの研究グループによる調査)調査によると、心肺蘇生全体では、男女比に大きな比率の差はありませんでした。しかし、AEDパット装着についてみると、小中学生では大差が見られませんでしたが、男子高校生は83.6%、女子高校生55.6%という結果になりました。
年頃の女性に対しては、服を脱がせパッドを貼るという行為に抵抗があるという結果の現れかと思います。このことがネックとなり年頃の女性に対してAEDが使用しずらいということになると大切な命を救うことが出来なくなります。緊急の際でも女性に対してAEDの使用を迷ってしてしまう方もいるかもしれませんが、まずパットを貼ることが大事です。

AED財団の理事である京都大学の石見教授によると、女性の服を脱がすことに抵抗がある場合には、
・電極パットを貼る時、服は全部脱がさなくても素肌にパットが密着させれば大丈夫です。
・ブラジャーを避ければ、取らなくても大丈夫です。
・電極パッドを貼ったあと、服を掛けても大丈夫です。
また、JR加古川駅で実際に30代女性を救助した駅員さんの話では、周りにいた乗客に協力してもらい、帰宅ラッシュ中の電車の窓を衣服で隠してもらい、プライバシーの配慮を行ったそうです。服を脱がさずAEDを使用する方法や周りの方に協力してもらいプライシーに配慮しつつ、AEDを使用する方法も知っておくことが重要になってくると思われます。

目の前で人が倒れたときの心構え

兵庫県西脇市の開業医冨原均様のお言葉をご紹介させていただきます。(yahooニュースより)
阪神淡路大震災の際に医療ボランティアとして神戸市内で活動されていた冨原様は、震災の翌年の1996年から2019年の12月時点で1061回心肺蘇生法の講習会行ってこられました。医師としての大変お忙しい中で年間44回以上も心肺蘇生の講習会をされていることになります。冨原様の以下のお言葉はいざという時に勇気を与えてくれますので紹介させていただきます。「阪神淡路大震災の現場で人の命は人が救うということを学んだ。心肺蘇生法の技術が上手いとか下手とかそんなことはたいしたことではない。目の前で人が倒れた時にそれをやるかやらないかが問われている」と話されています。
冨原様は、西脇市を含む兵庫・北播磨地域を中心に、小中学校、高校などの教育機関や自主防災組織などで心肺蘇生法の講習を続けてこられこれまでの受講者は、子どもから大人まで約10万人に上るようです。こういった活動の成果で、当初西脇市の救急救命率は5%程度でしたが2018年度は11%と初めて10%を超えたようです。

心臓突然死者数での考察

日本では年間に何人の方が心臓突然死で亡くなっているのでしょうか?
医学的には「症状が出現してから24時間以内の予期しない内因死」と定義されているようです。この心臓突然死者数は年間に約7万人にのぼると言われております。この数字を、他の死者数と比べてみましょう。交通事故の24時間以内の死者数は平成29年度は3,694人でした。実にこの死者数の19倍程度心臓突然死で亡くなっていることになります。交通事故の死者数減には、違反罰則の強化もありますが自動車メーカーの安全機能の強化も大きな要因となっていると思われます。最近の自動車の宣伝文句は安全性が大きな売りとなっていますが、我々消費者が大きな負担をして安全を買っていることになります。また、火災による死者数は平成27年度で1,204人(放火自殺除く)となっております。心臓突然死と比較してかなり少ない数字となっております。これは、住宅メーカーの難燃剤開発や消火器の設置が進んだことが大きな要因と思います。
交通事故の死者数減、火災での死者数減の成果を考えると心臓突然死減も今後大きな期待が持てそうです。人口が減少していく中、高齢者の比率も多くなる日本でAEDの役割は益々大きなものとなっていくと思います。

一般市民によるAED使用の効果に関して

平成28年度中のデータ(消防庁発表)を簡単にまとめます。
日本では1年間に約7万人の方が心臓突然死で亡くなっています。一般市民が心原性の心肺機能停止を目撃したのは25,569件でした。その内、1,204件が一般市民によりAEDにより除細動を実施されました。これらの数字から、一般市民によるAEDを用いた除細動実施率は1,204/25,569=4.7%ということになります。この数字は決して高い数字とは言えないような気がします。
それでは、一般市民により除細動を実施された方の1か月後の生存率は53.3%で、除細動を実施しなかった場合の11.3%の4.7倍になります。また、社会復帰率は除細動を実施された方の45.4%で、除細動を実施しなかった場合の6.9%の6.6倍になります。除細動を実施された方の約半数の方が、社会復帰をされているということになりAEDの大きな成果が分かります。
これらのことから、一般市民の方が直ぐにAEDを使用できるような社会環境(配置、救命教育、AEDの管理)を構築していくことが重要となると思います。

突然の心停止65%が自宅(朝日新聞掲載より)

自宅はリラックスもでき安全な場所のように思いますが、心臓においては別のようです。(以下2019年10月6日の朝日新聞の記事より)
大妻女子大や京都大学、大阪大学の研究チームによる総務省消防庁の統計データを分析した結果、突然の心停止事例は約65%が自宅で起きていることが分かりました。(事例総数は約7万人/年間)1ヶ月後の生存率も3.4%と公共の場所で倒れた場合の19.7%に比較しても大きな差が見られました。この救命率の差はAEDの使用率の差からも推察できます。公共の場では32.1%の人にAEDを使用されたのに対して、自宅ではわずか0.9%という低さでした。
公共施設でのAED設置は進んでいますが、居住地区でのAEDは普及していないのが一因として考えられます。また、近くにあってもどこにAEDが設置されているかの把握ができていない場合もあります。(近くにあっても夜間は取り出せない場合もあると思います。)
以下は私見となりますが、ランドマークの認知度が高いコンビニや交番への設置が進むことが必要と思います。また、マンションの設置に関しては1戸あたりの負担などを考えた場合に費用負担も小さく設置のハードルは高くないと思います。マンションの管理組合の方は設置のご検討をされてみてはいかがでしょうか?

消防の通信指令員の口頭指導の効果

通信指令員の心肺蘇生法の口頭指導が現在されております。倒れている人が意識がない時点で119番通報すると思いますが、消防には通信指令員がその電話対応に当たります。昔とは変わり、必要に応じて通信指令員の心肺蘇生法(胸骨圧迫+AED)の口頭指導が現在されております。消防では、電話での口頭指令の訓練などもされており、いざという時の大きな手助けになると思います。
アメリカのシアトルは世界一救命率が高いと言われています。この要因は、バイスタンダー(居合わせた人)によるCPR(心肺蘇生法)実施率が70%を越していることが挙げられます。この70%のうち、約40%が電話オペレータによる口頭指導でなされているようです。ちなみに日本でのバイスタンダーのCPRの実施率は約57%と言うデータがあります。(平成28年データ)千葉市などでは、医師会が中心となり日本のシアトルにという目標で教育対策に取り組まれているところもあります。
日本ではほとんどの人が携帯電話を持っているので、この口頭指導の成果が今後どんどん高まってくると思われます。現場に一人で居合わせることがあると思いますので、携帯電話のハンズフリー機能は大きな役割を果たすと思います。

一般市民のCPR実施の有無別の生存率(平成28年総務省データより)
アメリカ心臓協会からCOVID-19での救命蘇生法での対応指針
アメリカ心臓協会資料より

新型コロナウイルスの感染が全国に広がりをみせ大変な状況になってきておりますが、一般市民による心肺蘇生法に関する指針が必要なタイミングとなってきております。この度、アメリカ心臓協会AHAから分かりやすいやり方が公開されましたのでご参考にしてください。(日本蘇生協議会より)
もしあなたがコロナウイルス感染をご心配されるのであれば、このような心肺蘇生(CPR)をして下さいとのことです。
①119番通報してAEDを手配する
口と鼻をマスクか洋服で覆う、倒れている傷病者の口と鼻も感染予防のためマスクか洋服で覆う
胸骨圧迫だけの心肺蘇生(ハンズオンリーCPR)を行う(人工呼吸を省略)
④AEDが届いたら直ちにAEDを使用する
もともと一般市民による心肺蘇生法の場合、人工呼吸に自信のない人は胸骨圧迫のみで良いと言われております。大切な命を救うために、救助者の感染リスクを下げながらの対応方法の確認は必要と思います。

新型コロナウイルス感染症を踏まえた救急蘇生法指針(厚生労働省)

上項でアメリカ心臓協会の指針を掲載いたしましたが、日本でも厚生労働省の正式な指針が出ましたのでその内容を転載します。成人に対する対応は同じですが、子供に対しての対応が追加されております。具体的な対応方法が、明示されておりますので今後はこのような対応を行う必要があります。(2020年5月)全ての心停止傷病者が感染の疑いありとして対応することが示されております。子供に関しては、抵抗がなく人工呼吸の技術を有している人は胸骨圧迫に人工呼吸をミックスさせた方法を推奨されています。

<以下原文の通り>※重要な部分を強調しています。
1.基本的な考え方
・ 胸骨圧迫のみの場合を含め心肺蘇生はエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性があるため、新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、すべての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応する。
成人の心停止に対しては、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫とAED による電気ショックを実施する。
・ 子どもの心停止に対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、人工呼吸も実施する。
※子どもの心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高い。
2.救急蘇生法の具体的手順
新型コロナウイルス感染症の疑いがある傷病者への「救急蘇生法の指針2015(市民用)」における「一次救命処置」は、次のとおり実施する。
・ 「2)反応を確認する」、「4)呼吸を観察する」確認や観察の際に、傷病者の顔と救助者の顔があまり近づきすぎないようにする。
・ 「5)胸骨圧迫を行う」エアロゾルの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、ハンカチやタオルなどがあれば傷病者の鼻と口にそれをかぶせるように変更する。マスクや衣服などでも代用できる。
・「6)胸骨圧迫30 回と人工呼吸2回の組み合わせ」
成人に対しては、救助者が講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合でも、人工呼吸は実施せずに胸骨圧迫だけを続けるように変更する。
子どもに対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせる。その際、手元に人工呼吸用の感染防護具があれば使用する(「救急蘇生法の指針2015(市民用)」P28~29参照)。感染の危険などを考えて人工呼吸を行うことにためらいがある場合には、胸骨圧迫だけを続ける。

JRC蘇生ガイドライン2020の解説
JRC蘇生ガイドライン2020

6年ぶりにJRC蘇生ガイドライン2020が発表されました。通常であれば、2020年に発表の予定でしたが、現下の状況の関係で1年遅れの2021年に発表となりました。
蘇生ガイドラインとは、様々な学会や有識者がエビデンスに基づいてより救命率向上に寄与する様に改善を重ねております。いろいろな救助データを集める必要もあり5年に一度改定しております。改善の流れとしては、一次救命においては簡単に分かりやすくなってなってきています。例として、脈拍の確認なしや一般の人では判断が難しい意識や呼吸の有無確認で判断に迷う際には”なし”と判断するのは分りやすくなっています。また、人工呼吸に関しても、訓練を受けていない一般市民は胸骨圧迫のみ行うと変わりました。
ここでは、今回の改定の重要ポイントを抜粋列記します。
・傷病者に反応がない場合、あるいは反応の有無判断に迷う場合、救助者は119番通報をして通信指令員の指示を仰ぐ。(ハンズフリーの利用で口頭指導を受けながらのCPR)
呼吸状態の判断に迷う場合には、胸骨圧迫による有害事象を恐れることなく、ただちに胸骨圧迫からCPRを開始する。(呼吸の確認は10秒以内)(服の上から胸骨圧迫)
・胸骨圧迫の部位は胸骨の下半分とし、深さは胸が約5cm沈むよううに圧迫するが、6cmを超えないようにする。1分間あたり100~120回のテンポで胸骨圧迫を行い、圧迫解除時には胸を完全に元の位置に戻し、力がかからないようにする。胸骨圧迫の中断を最小にする。(小児は胸の厚さの約1/3)(140回/分以上などテンポを増すと圧迫の深さが減り生存退院に影響がでる)
訓練を受けていない救助者は、胸骨圧迫のみのCPRを行う。(胸骨圧迫の質の維持のために1~2分を目安に胸骨圧迫の交代)
救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意思がある場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の日で行う。特に小児の心停止では、人工呼吸を組み合わせたCPRを行うことが望ましい
・人工呼吸を行うための胸骨圧迫の中断時間は10秒以内

【AEDの変更点】
小児用表記が未就学児表記へと今後変更となります。(小児モード⇒未就学児モード、小児用パッド⇒未就学児用パッド)この変更により、小学生は成人モード?と悩む必要が無くなり分かりやすくなりました。小学生に以前の小児モードで使用した場合には、エネルギーが少なく有効な電気ショックができない場合があるので注意が必要です。
既存のAEDは全て従来の表記のままです。今後しばらくの間は混在しますので注意が必要です

AED使用率、救命率の変遷

NHK資料(総務省消防庁データ)

AED財団資料(総務省消防庁データ)

2004年7月に一般市民によるAED使用が許可されました。その後、毎年総務省消防庁のAED使用率のデータが公開をされております。許可後2年程は、わずか1%にも満たない数字でありました。その後、AEDの設置も進み救命の社会環境が変わり毎年右肩上がりで順調に使用率も上がっています。2019年には5%を超すまでになりました。ところが、2020年この傾向が一変して使用率が4.2%まで一気に下がりました。
これは、コロナ禍で救助者自身の感染防御の思いからAEDの使用率が低下したものと考えられます。こうした中AED財団などでは、コロナ禍での心肺蘇生法を提言されております。この方法を簡単に説明しますと人工呼吸無しで口元を布で覆い胸骨圧迫やAEDを使用するとなっております。この方法だと感染リスクは問題ないレベルまで下がると言われております。しかし、いざという時に落ち着いてこの方法ができず、結果としてAEDが使用できなかったのでは無いかと想像します。
また、総務省消防庁データ(AED財団資料)によりますと同じように2020年胸骨圧迫を行った傷病者の救命率も一気に下がっております。こちらも、コロナ禍での胸骨圧迫に変化があったことが原因していると思われます。
今後の一般市民へのコロナ禍での心肺蘇生法の幅広い普及が急がれると思います。以下の日本救急医療財団の資料をご参照ください。

NHKニュース原文はこちら

RED SEATの取り組み

RED SEATでのフロー

日本AED財団 本間洋輔医師

世の中にあることに関して当事者意識を持ち色々考えると素晴らしいアイデアとして生まれ、それが次の新たな取組になるケースはあります。NHKニュースより素晴らしい取り組みを知りました。確か2021年末にAED財団のフォーラムでも紹介がありましたがここで詳しく紹介させて頂きます。
スポーツ観戦は数万人という観客が集まります。また、会場も大きく万が一心停止が発生した際に、3分程度のAED使用を理想と考えた場合、なかなか難しいのが現状であると思います。通常では、観客の人はAEDの設置場所を意識していないし、いざという時に率先してAEDを取りに行き届けるという行動に繋がらないのが現状と思います。この問題点に意識を向けアイデアを出したのがスポーツ好きの高校生3人でした。アイデアを出した田中大悟さんは「スタッフがただAEDを運ぶだけでは、啓発活動にならないと思ったんです。全部受け身になってしまうじゃないですか。何か観客が関われる形だと啓発活動になるんじゃないかと考えていて、観客にAEDを届けてもらうシステムをできたらいいかなと思いつきました」と言われております。RED SEATERの誕生です。客席に設けられたRED SEATに座った観客(RED SEATER)は事前にAEDの場所を確認し、そしていざという時はAEDを運ぶ役目を担います。
このアイデアは新たなリーグとして今年開幕したばかりのラグビーのプロリーグ、リーグワンのクボタスピアーズ船橋・東京ベイが取り入れました。決めたチームのゼネラルマネージャーの石川充さんには2009年の20歳以下の代表戦で選手のお父様が心臓発作位で観客席で亡くなるという経験をされていました。その経験の中、観客の救護はすごく大事との思いがあり取り入れられたようです。
心停止を起こしてからAEDの使用が1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下するので、この方法によりAEDを2分以内に届け、3分以内に使うことを目標にしています。将来的には「RED SEATER」を一般の観客に務めてもらう形を目指しているようです。日本AED財団の本間医師は「観客席に注目して突然死を減らす仕組みというのは、まだまだ少ないのが現状です。この『RED SEAT』はあくまでシステムであり、何か物を買う必要はなく、もともと競技場に備え付けてあるAEDを使うことから費用がかからないことがポイントです。いろんなチーム、いろんな競技で導入しやすいと考えています」と話されます。
特に費用も発生しないので、全国の観客席に早くRED SEATが設置され安心してスポーツ観戦ができるようになれば良いなと切に願います。

NHKニュース原文はこちら

出血している人に対する救命処置

安倍前首相の銃撃事件後に出血している人への胸骨圧迫やAED使用に関してどうなのかとの意見も出ております。非常に特殊なケースではあるかとは思いますが、整理のためにAED財団が緊急提言を行っていますので紹介します。その内容は、以下の通りです。①どのような状況でも心停止を疑ったら、直ちにAEDを使用してその指示に従うことが必要。②出血している部位が分かる場合は、その部位を押さえて圧迫止血をした上で、胸骨圧迫を行うことが望ましいですが、実際には難しいことが多いと思われます。原因に関わらず、心停止の際に何より優先すべきは、脳や全身に血液を送ることです。倒れている人が心停止(反応も呼吸もない、あるいは普段通りではない状態)であれば、その原因に関わらず直ちに胸骨圧迫を開始してください。
一般市民の行う救命処置では単純で分かりやすものである必要があります。今回の緊急提言は非常に明快で分かりやすいものとなっております。現在、119番通報をした際に救急指令員が状況を判断し指導してくれますので、一人で判断を背負う必要はありませんのでご安心ください。
最後となりましたが、今回その場で懸命に救命処置を施した勇気ある方に敬意を表します。

緊急提言の全文はこちら

救命サポータープロジェクト(teamASUKA)

ダウンロード

2022年12月13日に東京の学士会館で日本AED財団の"AED推進フォーラム2022"が開催されました。今年のテーマは「あなたも私も救命サポーター」ー全国に広がるteamASUKAーでした。毎年、救命に対する取り組みは進化していますが、今年はこのプロジェクトにあるようにスマホの活用としての救命活動のDX(デジタルトランスフォーメーション)が始まったと感じました。
心臓突然死を減らすためには、AEDを用いた救命の仕組みづくり、仕掛けづくりが重要です。実際に行動を起こすことのできる人を増やす目的で「救命サポータープロジェクト teamASUKA」が立ち上がりました。このアプリの主な機能は、AED検索機能、AEDマップ、救命ナビゲーション、仲間とのシェア機能など盛り沢山です。皆様も是非、このアプリのダウンロードをしてご活用ください。AEDを使用するには勇気と知識が必要です。
ほとんどの人がスマホを持っているかと思いますが、今後も色々なサポートや公助社会実現のための仕組みが動き出します。

Live119映像通報システム

いざ目の前で人が倒れた場合、一般の人は気が動転し普段のように落ち着いて判断や行動ができず正確に症状や場所を説明できない人が多いと思います。
この現状を解決すべく新たな映像を用いた口頭指導ができるシステム(Live119)の稼働が始まりつつあります。今は、ほとんどの方がスマホを持っている時代となりました。このスマホを利用して簡単に「こんな状態です」と動画で指令員さんに説明ができるこのシステムが東京消防庁などで稼働が始まりました。通報を受けた指令員の方も現場状況が手に取る様に分かるので適切な指示が可能となります。これからの一般市民の救命も大きく変わり救命率向上に寄与する可能性があります。東京消防庁管轄ではこのシステムを利用した救命事例も報告されました。
※全ての自治体で運用が始まっているわけではありません。

【Live119映像通報システムでできること】
・救命現場の場所(GPS)や状況(画像)を正確に伝えることができ、適切な指示が受けられる
・応急処置の方法を画像や動画で確認できる。
・出動している消防隊や救急隊が映像共有できる。(現場到着後の活動をよりスムーズに行える)

東京消防庁の紹介ページはこちら

救命コーチングアプリLiv for All(日本AED財団発表より)

日本AED財団より「救命コーチングアプリLiv for All」がリリースされました。Liv(リブ)とは、ノルウェー語で「生きる・命」を意味しています。Livを使えばAEDを用いた救命処置を、たった15分、無料で楽しく実践的に学ぶことができます。
トレーニングに必要なものはクッションなど「押せるもの」と、スマートフォンやタブレットだけです。倒れた人の発見から119番通報、胸骨圧迫、AEDの使い方を学べる体験型の新しいオンライントレーニングアプリです。
救命処置の知識と技術の習得ができる素晴らしいツールです。

Livの公式サイトはこちらです。

 https://aed-zaidan.jp/liv/index.html

-Livの開発の背景-
救命処置への参加には、知識・技術の普及が不可欠です。わが国では、従来より消防機関、本財団を始めとした団体、学校教育等により救命処置の教育、普及がなされてきましたが、十分とは言えません。また、救命講習の展開に当たっては、学校を始めとした開催側の負担が課題となっています。Livはテクノロジーを活用することでこの課題を解決します。

その他の情報

AEDの普及ソング「君の瞳」

学校の救命処置の授業やAEDの講習会などで広く使われている歌で「君の瞳」があります。歌われているのは、青木まり子様で非常に優しい柔らかな歌は涙を誘います。この歌の作詞作曲者は故高円宮様です。この曲は高円宮様学習院中等科時代に作られたそうです。そして、生前に友人の青木まり子様に送り、歌ってもらいたいとお伝えしていたようです。
高円宮様はスカッシュ中に心室細動を起こし2002年11月21日にお亡くなりになりました。東京の真ん中で高度救命医療の整った中でもこの突然の心室細動から命を救うことができませんでした。その当時、医師や救急救命士らに使用が限られていたAEDが一般の人が使用できる様になった大きなきっかけとなりました。約2年後の2004年7月に法改正によりAEDが一般の人に使用できるようになりました。
現在、高円宮妃殿下は日本AED財団で名誉総裁をされAEDの普及に取り組まれております。また、青木まり子様も同財団でAED大使として活動されております。

こちらのユーチューブ動画をご視聴ください。

AEDの医療費控除に関して

ご自宅にAEDを設置したいと思われている方も増えてきております。税制面で医療費控除を受けられる場合があります。医療機関で心室細動の発症の可能性があるとされた場合には、AEDのレンタルや購入などの費用は医療費控除の対象となります。医療機関の医師による指示や処方がある場合に限りますので、自己判断で設置した場合には、控除は受けられません。
ICD植え込みまでの期間でのバックアップ目的など期間が自由に設定できるレンタルが有効と思われます。このような方は、一度ご相談ください。レンタル方式でのメリットのあるご案内をさせて頂いております。

AEDの補助金例に関して

AED設置での補助金は現在ほぼありませんが、一部の地区では予算化をして補助金を出しているところがあります。大田区の補助金の取り組み例ご紹介します。大田区のこの取り組みは全国的に見ても早い動きと思いますが、今後このような自治体も出てくるような気がします。
大田区では24時間利用可能なAEDを設置した際に初期費用の2/3(上限金額43万1000円)を補助金として出すとなっております。当然補助要件がありますが以下の通りです。
①救命講習等の修了者がいること
②半径100m以内に24時間利用可能なAEDがないこと
③屋外設置で温度管理機能付きのボックスを利用すること
④5年間設置を継続すること
⑤毎日、AEDを点検管理すること
また、区民が主体の運営で、区民が主な対象となるスポーツ競技、イベント、講習会等に関して一時的にAEDをレンタルする際にその費用の9割の額(上限14,000円)を補助金として出すとなっております。

神奈川県大和市でのAED購入助成事業例

自宅での心臓突然死が65%を占める状況でこの対策として神奈川県大和市では個人で購入の場合に助成金を出すようです。大和市のホームページに記載の内容をお知らせします。
1.助成対象
以下のすべてが当てはまる方が対象
・自宅に設置するためにAEDを購入した
・単身世帯でない(居住の状況により対象となる場合あり)
・申請をする日までに1年以上大和市に住民登録がある
・対象者および対象者と同じ世帯の方に市民税等の滞納がない
・対象者の属する世帯で、最も所得の多い方の市民税の所得割の額が46万円未満である
2.助成対象となる費用
・AEDとその他付属品1組の購入費
3.助成金額
・費用の1/3(5万円が上限)
今後この様な自治体が増えてくるのかもしれません。ご家族で心臓で心配な方がいらっしゃる方はご利用されたらいかがでしょうか?

まちかど救急ステーション登録制度

まちかど救急ステーション登録制度というものがあります。建物や商店の入口にこのステッカーが貼られているのを見かけたことがあるかもしれません。
元々の目的は、呼吸や脈拍が停止するなどの重篤な傷病者が発生した際に市民による安全・安心のまちづくりを推進し、救命率の向上を図ることとなっております。
まちかど救急ステーションは、以下の全てを満たしていないといけないです。
①常時使用可能な状態に整備されたAEDを設置していること。
救命講習等を受講している職員、従業員等が公開時間又は営業時間に勤務していること。
③前号の職員、従業員等の再講習については、3年を目安として受講していること。
徳島のある救急ステーションでAEDを迅速に提供をして人命救助に役立った事例があり、感謝状を受けたられたと新聞報道がありました。AEDを設置した場合には、まちかど救急ステーションの登録も事業所の社会貢献として良いことと思います。

「スポーツ現場における心臓突然死をゼロに」~日本循環器学会 日本AED財団~

広くAEDの設置が進む中、日本循環器学会と日本AED財団から「スポーツ現場における心臓突然死をゼロに」という提言がありました。AEDに関しては、すべての現場が重要なのは当然ですが、中でも倒れた瞬間を発見される可能性が高いスポーツ現場においては、心臓突然死をゼロにできる可能性があります。現に東京マラソンでは、30秒以内に胸骨圧迫と3分以内にAEDの使用を目標とした救護体制を敷くことにより、11名もの方全員が心停止状態からAEDによって救命されております。
この提言では、あらゆるスポーツにおける救護のあり方に関する提言がされており、非常に分かりやすく為になるなるものとなっております。スポーツ現場に携わる方は非常に参考となるものだと思います。添付のPDFファイルをご参照ください。(8ページ)

プッシュプロジェクトに関して

大阪ライフサポート協会 PUSHプロジェクトより転載

8月10日はハートの日として、全国でPUSHプロジェクトの方々が小学生にも分かるような形で救命講習会が開催されています。PUSHプロジェクトでは「PUSHコース:胸骨圧迫とAEDの使用に重点を置いた心肺蘇生のコース」を通じて、だれでもできる心肺蘇生を普及し、救命率の向上を目指そうということで活動をされております。PUSHコースはかわいいイラストを用いたアニメーションや救命道具を用い実践中心に簡単で分かりやすく、楽しく学習することが出来るように工夫されています。
このPUSHには3つの思いが込められております。
胸をPUSH
胸骨圧迫により、止まった心臓の代わりに、脳をはじめとした臓器に血液を送る。
AEDのボタンをPUSH
AEDの指示に従い、ショックボタンを押す。
あなた自身をPUSH
倒れている人を見かけたときに、まず、勇気をもって声をかけてあげること。そして、何かできることをしてあげること。
一般の人々の中に心臓突然死に遭遇した際に勇気をもって対応できる人が増えることが重要と思われます。日本はAEDの設置台数では人口比で世界一と言われており、このような地道な活動が大きな成果として現れてくる日が近いと思います。

AEDの刑事・民事責任

まれに一般市民がAEDを使用して何か問題があると法的責任を問われるのではないかと心配する方がおられます。しかしAED使用に限ればその心配は無用です。
AEDを使用した場合の法的責任について「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書」(平成16年7月1日付医政発第0701001号厚生労働省医政局長通知添付)は、「人命救助の観点からやむを得ず行った場合には関係法令の規定に照らし免責されるべきであろう」と判断をしております。
傷害罪などの刑事責任が問題とされた場合に、生命の危難を避けるために実施した行為である場合には緊急避難(刑法第37条)に該当し犯罪は成立しないと言われております。次に民事責任ですが、一般市民によるAED使用は急迫の危害を免れさせるために行う緊急事務管理(民法第698条)に該当し「悪意又は重大な過失」がなければ損害賠償責任を負いません。悪意とは対象者を害する意図が認められる場合であり、重大な過失とは著しく注意を欠くことです。民事責任が追及されても裁判所が悪意や重過失の存在を認めることはほとんど考えられません。
以上の法的な保護もあるので、緊急の場合のAEDの使用をためらう必要がありません。むしろ、逆に使用しない方が後から問題になると思います。

【民法原文】
(緊急事務管理)
第六百九十八条 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

安全配慮義務(違反)

AEDの設置を検討されている方が一度は疑問を持たれるようですが、消火器のように消防法で決められたものがあるのではないかと思われている方がいます。現時点では、法律で罰則規定のようなものは決められていないです。一部の地域で10階以上の建物にはAEDを設置することと条例で謳われている場合もあると聞きますが、あくまでローカルな話です。年間に亡くなる人数を比較した場合(自殺を除く)、火災が約1,200人程度で心停止が約7.9万人となっており圧倒的なさがあります。こういう現状から、その内法律化されてもおかしくは無いと思います。
では、法律に無いので設置しないで良いかとなるとそれは否です。それが、安全配慮義務というものになります。企業に置かれては、従業員のメンタルから安全環境の提供など様々な対策をされていると思います。安全配慮が欠けて何らかの事が発生し訴訟となった際には、健康を害することが予想できたかどうか、トラブル・事故を回避できる可能性があったかどうか、などの視点で争われ大きな賠償金を支払わなければいけない事が発生します。
具体的にAEDの安全配慮義務の視点で過去の判例を挙げてみたいと思います。2010年に新潟県内の小学校で5年生の児童が心不全で亡くなった事件では、新潟地裁は『AEDを使用することは、期待されるものではあっても、義務であるという認識が一般的であったとは認められない』と遺族の訴えを棄却されました。一方で、5年経った2015年に、埼玉県内の高校で、女子生徒が強歩大会のゴール直後に亡くなった事件では、学校の救護体制が不十分でAED到着まで約20分かかったことから、さいたま地裁は学校側の注意義務違反を認めました。時間が経過することでAEDの普及が進み、AEDが一般的になってきたことに伴い、AEDを含めた安全配慮義務についての考え方に変化が出てきたと言っても良いかと思います。AED関連訴訟の多くは、AED不使用と死亡の因果関係を立証するのが困難であることから、遺族の訴えが認められる事例は少ないとのことです。そのなかで、さいたま地裁において、学校側の注意義務違反を認めた判決が出たことは注目に値します。
近年では、マラソン大会や大規模イベントなども各地で多く開催されております。主催者の方におかれましては、安全配慮義務の視点でAEDの適正配置などを検討される必要があります。

 

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